菜の花は何にさざめく廃線となりし軌条にふる天気雨
2014.9〜

2014.9/20〆(2014.12月号掲載)

暖色に染まる心斎橋筋のハウンドトゥースを窓越しに見る

■猥雑なはなしをしよう平日のビジネス街に舟をうかべて

本町の放置禁止のペイントのうえに置かれた自転車ふたつ

他人にはけして話せぬことばかり話してしまう 本町通り

■あこがれを子猫のようにもてあます九月、蝉鳴く箕面公園

阿波座から京町堀へあのころのおもかげさがす首が疲れる

■子供らと遊んだ土地にビルは建ち知らない国を見るようにみる

千日前を西へ向かえば千代崎の右にまあるい屋根見えきたり

■四三号を越えて二筋目を左折バーミヤンにてつけ麺を食う

■図書館の向かいのロイホの一角に隔離されつつニコチンを摂る





 

2014.10/20〆(2015.1月号掲載)

■夕空へ消えゆくものをかわきたる穂先ねかせてきれぎれに描く

■子の妻に「パパ」と呼ばれた墓参道ふりかえらずに「お」と応える

パパという呼び名に深い意味はなく女を囲う甲斐性もない

■父は子にとにかく肉を食わせたい生き物らしい上ハラミ焼く

■ホルモンは息子夫婦に薄切りのカルビは母にかぼちゃは我に

■喫煙の本数は増え不甲斐なき己を嘆く体を繕う

■ふんふんと不倫ドラマをひとごとのように観ており茶をこぼしつつ

■ローソンで便所をお借りしたあとに特に欲しくもないガムを買う

■一年の油よごれを落とすためベートーヴェンのチケットを取る

菓子棚で叱られおりし幼子と目が合わぬよう通り抜けたり





 

2014.11/20〆(2015.2月号掲載)

 

■おだやかに秋は過ぎおり暖色の絵の具ばかりを痩せ細らせて

■九年ぶりの眼科へゆきぬ九年といえば離婚をするまえの眼

■九年前わが目は何を見てなにに見ぬふりをしていたのか 妻の

名前などいまはいらない 筆さきに水を多めに含ませて描く

ゆるやかにせわしくなりし霜月の便器の蝿を小便で追う

勝ち負けの螺旋を降りて仰ぎみれば秋風はただ秋に吹くかぜ

■名前さえ薄れかけたる知り合いの孤独死、はるか人づてに聞く

見上げれば此岸彼岸のあわいなどどうでもよくて億千の星

■いくたびの出逢いをかさね来世を迷わぬために横顔をみる

■銀色の棺のような箱のなか喪中はがきがまたひとつ来る



 
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