菜の花は何にさざめく廃線となりし軌条にふる天気雨
2014.12〜

2014.12/20〆(2015.3月号掲載)

 

■スケッチを描くように母は語りおり我が五つの頃の小道を

いま永久に眠りしひとのあることを思えばきつき木犀の香

冬ちかき陽射しのようなおもざしに未生以前の記憶をたどる

■予定表埋まりつつある年末の雲の切れ間にあおぞらを見る

■それぞれを補わせつつ色と色にじませながら書く年賀状

鼻をかむ日曜のあさ無精髭のティッシュのカスに気付く夕方

■我の名に昨夜の雨をにじませて喪中はがきがまたひとつ来る

なぜに絵を描くかという問いに答えつつ思いだしおり詠う理由を

■冬の夜を列車はゆきぬ世界から隔離されたる方舟のごと

■となりあう座席にうもれ誰からも見えぬ死角で交わすほほえみ




 

2015.1/20〆(2015.4月号掲載)

■イアフォンをはずした耳にさわさわと師走の音が戻りはじめる

■年末に皿うどん食う最後まで取り置くうずらの白を見ながら

中高生のノロケ話に挟まれてひとりマクドでブラックを飲む

■クレンジング用品一式洗面の物入れにあり 誰のだっけか

■ラの音にあわせ整いゆく弦のあなたの呼吸に耳を澄ませる

■黄信号に阻まれてみたり遠回りしたりしながら送りとどける

■助手席の残り香に手をさしのべて赤信号を越えそうになる

■ほくほくと飲み干したるに缶底のコーンの粒が降りてくれない

新年を告げるゆく年くる年〉のひそかな蒼き火のように恋う

■厳冬のひかり保ちて揺れおりし雨滴まばらな電線に添う


 

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