菜の花は何にさざめく廃線となりし軌条にふる天気雨
2015.2~

2015.2/20〆(2015.5月号掲載)

■バレンタインデーに興味はない顔で郵便受けを八度見にゆく

■郵便受けのなか横たわる封筒に「歌うたのしさ読むよろこび」の文字

義理ならばチョコは要らぬと嘯きてなにごともなくその日が終わる

■野菜とか肉の隙間に板チョコを忍ばせて買うバレンタインデー

■予定表に予定埋まらぬきさらぎの雲なき空をあおぞらと呼ぶ

暑いので袖をまくれば寒くなり袖をもどして一日を終う

■豹よりも豹柄の似合うご婦人が肉を見る眼ですれ違いたり

■〈開運食はイカとタコ〉とう占いの頁を閉じてくら寿司へ行く

■骨付きのチキンにしゃぶりつきながら思い出しおり細き鎖骨を

■今朝もまた水を遣るとき受け皿のみずの溜まりにはじめて気付く





 

2015.3/20〆(2015.6月号掲載)

■「なるはや」とは「なるべく早く」という略語なげかけられて社に戻りたり

「なるはや」といえば「国体」グーグルで検索すれどそんなものなし

■「ごごいち」は「午後一番」の略語なり納品のあとCoCo壱に寄る

木漏れ日がつくる斑な道をぬけグリーンジャンボを連番で買う

コンビニのレジで公共料金を振り込むひとに列は続かず

■どのレジも込み合いたれば買物の少ないひとのうしろに並ぶ

行列のレジで端数の一円をさがしあぐねて千円を出す

■二〇度を越える予報を聞きし夜フローリングに素足を置きぬ

■周回をかさねるごとに乾きゆくエンガワ二貫をまたも見送る

スパイスにいまだ痺れる舌先をわけあうように交わすくちづけ




 

2015.4/20〆(2015.7月号掲載)

■老いという実感いまだうすき春散らさぬほどの雨にうたれつ

■ぽつぽつと不安のように灯りゆく雨滴まとめてワイパーで掃く

薄紅の散り敷かれたる沿道に紺のスーツの群れを見送る

■米を研ぐ水やわらかき春の暮れ回転翼の音いつしか去りぬ

■あれから二年五年八年、とおざかる港のような春の在りたり

■異邦人の打ち寄す波にのまれつつどうとんぼりをひとり旅する

■ほそき道過ぎいる腕に触れしのち葉はしなやかに元へ戻りぬ

桜木にみっしりと咲く薄紅のはざまより見る仲春のそら

白雲をのこして描く陽春の空のかたちにそらいろを塗る

■雨ふればにわかに色づくさくらばな逢えぬ一日はなにごともなく






 
- comments(0) -
Comment








<< NEW | TOP | OLD>>